ゾンビのヒットマン
「この人が、この会社の社長です」


グレーマスクの言葉に頷くフリをしながら、私は女の匂いを嗅いだ。

この女、なかなか良い匂いがする。

花だ。
花の香りだ。

何の花かはわからないが、おそらく雰囲気的に花の香りだ。

先ほどまでは少し離れた場所で話していたので気付かなかったのだが、隣りに立った途端、ほんわかと香ってきた。
ほんわかなのだ。

どぎついと私も顔をしかめてしまうのだが、このほのかに香ってくる具合がたまらないのだ。


さて、意識を“社長”に戻すとしよう。
名残惜しいが。

正直匂いの方が私にとっては重要なのだが、しかたなく社長に意識を戻すとしよう。


社長が回転式の椅子を回転させ、その姿を現した。

なんというコトだ。

私はこの人物を見たコトだある!


どこで見たのだろうか。

私にとって重要な人物のような気がするのだが、思い出せない。

と思ったがああそうだ、思い出した。

あのときだ。

昨日スコープから覗いたときに見たのだ。

そうだ、ターゲットなのだから見たコトがあり、重要な人物であるのは当然だった。
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