…TRIANGLE…

 ナツの一言が、俺の荷物以外のものを全部取り上げてくれた。

 その一言が泣きたいくらい嬉しくて、自分が馬鹿なことしたって悔しくなる。


 ナツの自転車の後ろに飛び乗ると、少し足にきたけど、俺は苦笑いでそれを誤魔化して、はやく進め! とナツに命令した。


「ふざけんな、心配させやがって」と文句を言いながら、自転車を漕ぐナツに精一杯謝りたかった。


 好きだとか、誰と誰が付き合うとか……そんな小さなもんに俺は捕らわれすぎてたのかもしれない。



 穂香にも謝りたい。


 とくに穂香が一番メンタル面が弱いのに、俺の自分勝手な欲望に振り回しすぎた。

 穂香を好きだと想った気持ちは嘘じゃないけど、それを束縛してしまおうとした俺は間違ってる。


「ほら、隼斗。降りて歩け」

 駐輪場で次から次に知ってる顔に話かけられて、インターハイのことと、怪我の話をしながら教室に入る。


「ナツ、穂香は?」


 担任が出席をとりはじめたのに、穂香の席が空いている。


「あれ? ほんとだ。休みか? 聞いてないけど、メールしてみる」





 
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