先輩を卒業します
「2年分の想い、ちゃんと伝えな!!」
教室の隅っこで、髪を触りながらこっちを見ている先輩。
「先輩・・・・・・どうして?」
「いや。俺もよくわかんないけどいきなり腕を掴まれてここに連れてこられた」
こんなことってある?
今の会話が今までで一番長い会話かもしれない。
それくらい、私って先輩にとって遠い存在。
伝えよう。
せっかくもらったこのチャンス。
「好きです!!ずっとずっと好きで、毎日見てました!」
泣かない。
絶対に。
ちゃんと顔が見たい。
もう会えない先輩の顔を、ちゃんと目に焼き付けたい。
「ありがとな。うん。マジで」
噛みしめるようにそう言ってくれた先輩は、一歩前に出た。
「俺は卒業するけど、お前らまだ1年あるから頑張れよ」
「はい!!」
少し茶色い髪。
染めているわけじゃないのに茶色くて、自然な色。
切れ長の目。
かわいい口。
冬になると少し白くなるけど、だいたい一年中日に焼けて黒い肌。
大好きです。
「言い残したことないの?もう会えないんだよ」
と友達に言われ、私は恥ずかしさも忘れて叫ぶように声を出した。
「先輩が好きです!!でも今日、先輩を卒業します。今まで本当にありがとうございました。先輩に会いたくて毎日学校に来てました。嫌なことがあっても先輩に会えば元気になりました。私は先輩に会えて、本当に良かったです」
「照れる・・・・・・な」
鼻先を触った先輩。
その表情、かっこいい。
初めて見た。
「これ、いる?」
先輩は、カバンの中からサッカー部のユニフォームを出した。
「第二ボタンなくなちゃったから、これでいい?」
夢じゃない?
このユニフォームを着た先輩をずっとずっと見てたんだよ。
大好きな紫と黒の半袖シャツ。
「欲しいです!!!!!!!」
「じゃ、どうぞ」
先輩、大好きです。