先輩を卒業します
「んじゃ、行くわ」
先輩は、そう言って右手を差し出してくれた。
「握手してくれるんですか?」
「うん。俺も嬉しかったから」
握手・・・・・・してくれた。
大きな手だった。
何でも知っているつもりだったけど、見ているだけだから知らなかった。
ひんやりした手の感触。
近付かないと見えない頬のニキビ。
「ありがとう」
ゆっくりと目を見て、そう言ってくれた。
「先輩、ありがとうございます。高校、頑張ってください!!」
先輩は教室を出て行った。
私は足ががくがく震えて、涙が溢れた。
その場にしゃがみ込んで、動けなくなった。
「やったぁ~!これでちゃんと卒業できんね」
友達に頭を叩かれる。
嬉しくて、嬉しくて、
今の私なら空も飛べるかもしれない。
ありがとう。
みんな。
本当にありがとう。