強引な次期社長の熱烈プロポーズ

7.Satoshi's side2



「柳瀬さん。お疲れ様です」
「阿部さん…」
「偶然近くに営業行って、直帰するところだったんです」
「···偶然?」


近くに営業と言ったって、わざわざこんな裏通りを帰りに歩くなんて考えにくい。

(やはり厄介なことになりそうだ。
百合香が出くわさなければいいが…)


すると美雪はあっさりと偶然を装ったことを認めた。

「ごめんなさい。本当は時間、合わせました。柳瀬さんは勘のいい人だから、こんな小さな嘘をついても無駄ね」
「だったら、待ち伏せしたところでも無駄ですよ」

美雪が笑顔で白状し、それに対しあくまで冷静に顔色ひとつ変えずに柳瀬は答えを返した。


「今日は仕事の延長ででも構いません。どうです?」
「ONとOFFはきっちり使い分けてるんで」
「そうですか。…じゃあ今日のところは引き下がります」


柳瀬の目の前に立っていた美雪は一歩後ろに下がった。
しかし顔は柳瀬を向いたまま。

「私も“勘”いい方なんですよ」
「だから?」
「完璧な柳瀬さんでも彼女のことになると少しだけどそれが崩れるのね。まぁきっと普通の人には気付かれない範囲でしょうけど」


彼女が百合香のことを言っているのはわかった。
ただ、何を考えてるかまではさすがに解りかねる―――
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