強引な次期社長の熱烈プロポーズ
その美雪の体を片腕で避けて、押し倒された体をゆっくりと起こした。


「あなたは美人だし、こんな風に迫られていい気がしない人はいないだろうね」


崩れかけてたかと思った柳瀬の表情が、またいつものポーカーフェイスに戻っていた。
ベッドから立ち上がると、投げ捨てられてた自分の携帯を手に取った。
美雪は唖然としてただその柳瀬を見上げるだけ。


「だけど、なんでも思い通りにはいかないよ」

「―――いいえ。私はなんでも努力して手に入れてきた。仕事も。頑張れば大抵のものは思い通りになるし、なってきたわ。」


悪あがきのように美雪は柳瀬に吐き捨てるように言った。
しかし柳瀬はそんな美雪の言葉に寂しそうに小さく笑うだけだった。


「人の心は簡単には手に入らないよ」


そう。簡単には。
だから坂谷と百合香が何かあったなら事故みたいなもので、百合香には非がない筈。


「俺じゃない男なら、もしかしたらあなたを抱いてしまっていたかもね」


最後に今までの仕返しにひとつ嫌味を言ってしまった。
その位いいだろう?これから事の顛末を収集するのが大変なんだから。


優しくふっと笑う柳瀬に、美雪はもう何も言えなくて、悔しくて、部屋を飛び出していった。


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