椿姫-ツバキヒメ-
穴があったら入りたい。
今、まさにそんな状況だった。
お願いだから、早く行って欲しい。
そんな私の願いが通じたのか
男は前を向き再び馬を前に進めた。
私は、聞こえてしまった。
「………ブッ。」
屁の音、ではない。
堪えきれなかったのか
吹き出す音をしっかりと
この耳で聞いてしまったのだ。
「ククッッ…あははっははっ…あはははっ…」
静かな通りは一人の男の
笑い声に包まれた。
後ろ姿が小さくなっていても
笑い声が大きく聞こえた。
因みに
「ご乱心じゃああ!」
と、騒ぎまくる焦りまくる
付き人達の声も聞こえた。