特上男子
胸が苦しい。


いっそのこと潰れてしまえば楽になるんかな……。



「私の事は気にせず智輝さんは皆さんのところに行ってきて下さい。私ちゃんとここに居ますから」



いい子ちゃんなもう1人の私が笑顔でそう言っていた。


悪い子ちゃんなもう1人の私を必死に抑え込むように……。



『でも志保ちゃ……』

「志保ちゃんもそう言ってくれてるんですから一緒に行きましょうよぉー!!」



真弓さんは智輝さんの腕を引っ張り強引に立たせると、すかさず自分の腕を智輝さんの腕に絡めた。



『志保ちゃんごめんね。挨拶だけしてすぐ戻ってくるから』

「はいっ」



智輝さんに気を使わせたくなくて、元気よく返事をした。


痛々しい子……一瞬だけそう言いたげな目をした真弓さんの視線に気付いてしまった。


やけどこれ以上惨めな思いをしたくなくて、私は気付かないふりをして智輝さんを笑顔で見送った。


二人の姿が見えんくなった途端、大袈裟な程大きなため息が溢れた。


私のバカ……。


いい子ぶるけんこんな辛い気持ちになるんやんか……。







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