特上男子
『ほらっ』

「ありがと」



ジュースの缶を受け取り、笑ってお礼を言うと遥は雑に私の隣に腰を下ろした。


小学生くらいの子供たちで賑わう公園のベンチに座っている。


二人を見て落ち込んだ私を近くの公園まで連れてきてくれた遥。



『智輝の隣にいた人が氷の女王?』

「元氷の女王様ね。セリさんメッチャいい人やけん、そんな呼び方するの止めたんよ」

『諦める諦める言いながら、まだすげぇ好きなんだろ?』

「――うん」



二人の姿を見てこんなにショックなのは、きっとまだ智輝の事が大好きやけん。


ポスターとか雑誌とかで見るのとは訳が違った。


生の智輝は私の諦める為の努力を一瞬の内に無かったことにしてしまう程、強力やった。


はぁー……。


自分が情けなかぁー……。



『ちょーいい女だったなぁー』



そんな事遥に言われんでも分かっとるのに、人がそう言っとるのを聞くと泣きそうになる。


やっぱり皆が認める程美人で、私とは全然つくりの違う女性なんやと余計自覚させられる。





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