契約の婚約者
「頭が痛い……」


沙希はこめかみに手を置き、大きく溜息をつく。


「あら、風邪?」


「ママ、ちょっと休みたいからもう帰って」


「まぁ、ひどい。沙希ちゃんと会うのは久しぶりなのに……ご飯でも一緒に行きたかったわ」


「今日はいい……また連絡するから」


「今度、片桐さんをお誘いして一条の家に顔を出しなさい。お兄ちゃん夫婦も呼びますから」


『お兄ちゃん』の言葉に沙希の肩がピクンと揺れる。


「----それって、徹と翔の両方?」


「沙希ちゃん、お兄ちゃんたちを呼び捨てにするのはやめなさい。二人ともあなたのことを心配しているのよ。特に徹さんは沙希ちゃんのことが心配でたまらないみたい。いくつになっても妹はかわいいのねぇ」


コロコロ笑う十和子とは対称的に、沙希の口元はヒキつり、乾いた笑いが零れる。


あの兄まで出てきてはもう逃げられそうにない気がしてきた。



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