契約の婚約者
沙希の母十和子が訪れた日の夜、沙希は片桐を呼び出した。


片桐はあらかじめ呼び出されることが分かっていたのだろう、電話して間もなく沙希のマンションに姿を現した。


「俺のプロポーズを受ける気になったか?」


片桐は部屋に入るや否やそんな質問をぶつけてきた。


やはり一昨日の夜の言葉はそういう意味だったのか?


「冗談でしょ?」


沙希は冷ややかにそうひとこと言い放つ。


「冗談じゃない。本気だ」


「----何で?」


「沙希、お前のことが好きだから----とは思わないのか?」


「嘘くさい……」


沙希は思いっきり眉間に皺を寄せる。そんな彼女の仕草に傷つく様子もなく、片桐は口角を上げて笑っている。



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