契約の婚約者
片桐は、正攻法をやめ、外角から非常に魅力的なボールを投げてくる。どうせ遅かれ早かれしなきゃいけない結婚なら、好条件をオファーしてくれる相手としろ、と言っているのだ。


つまり、それは----自分のこと。


確かに、沙希にとっては非常に魅力的な提案だ。


あの親と兄なら、逃げてもアフリカの地までも追いかけてきそうだ。


家事もしなくていい、子供も産まなくていい、そして、今の生活も仕事も全てを保障してくれるというのだ。


そして、一条の家から解放される----


でも、片桐にとってのメリットは?


あれだけストレートな告白をされても、自分と結婚して片桐に何の得があるのか分からない、と思う。


それが一条沙希という女なのだ。


片桐の腕の中ということも忘れ、沙希は頭の中の計算機で損得勘定を計算し続ける。やはり、彼女の頭の中に、『愛しているから結婚する』という考えはないらしい。



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