契約の婚約者
「沙希----」


先ほどまで淡々と話していた片桐の声が急に艶っぽさを増す。はっと片桐の腕の拘束を振りほどこうとしたときには遅く、その唇が重なる。


「んん……まっ……て」


ダメだ、今こいつとキスをしてしまうと、思考能力が鈍ってしまう。


性的欲求に組み伏す前に、ちゃんと考えなければ……


唇が離れた瞬間、沙希は両手で片桐の胸を押し返し彼をキッと睨む。


「済し崩しにセックスしたくないって言ったのは誰?今考えてんだけど?」


一昨日の夜に言われたことを揚げ足に取ってやる。考える時間が必要だろ、と言われ熱くなった身体を放り出されたのだ。


「お前に考える時間を与えると、余計ややこしくなることがわかったからな。いらぬ方向にばかり頭が働くようだ」


そう言うや否や、片桐は沙希に反論する隙を与えず、もう一度唇を塞いだ。そしてその手は沙希のTシャツをまくり上げ、上へと伸びていく。


すぐに胸の突起を探り当てられ、沙希の身体がビクンと揺れる。こんな時、ノーブラは形勢が不利になる。


与えられる快感に沙希の身体の力が入らなくなり、自ら舌を絡め求めてしまう。


崩れる身体を抱きとめるようにフローリングに押し倒された。一気に行為に入ってくるかと思えば、激しいキスが繰り返された。



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