契約の婚約者
一昨日の夜を思い出させられる----


呼吸を奪い取られるのと同時に微かに残っていた理性も奪われてしまう。


唇を重ねている間も片桐の手は沙希の身体中を滑り、強い刺激をもって沙希を翻弄した。


これは良くない傾向だ、まるで身体が片桐がそうしてくれるのを待っていたかのように開かされる。


「ふぁ……ぁ……っ」


何とかしなければ、と思っても、口から漏れるのは熱い吐息と自分の声とも思えない弱々しい喘ぎ。


こんなのは、自分が求めているセックスではない。こんな自分は知らない。


沙希は初めて経験する身体の変化に対応できず、なされるがままに身体を預けるしかない。


沙希は本来、セックスでは自分が主導権を持っていたいのだ。勿論エクスタシーは感じたい、だが、相手から与えられるというより、自らそう仕向けるように指揮をとりたい。挿れられる、というより、挿れてやる、といった感覚なのかもしれない。


だから-----


片桐とのセックスは嫌いだった。



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