契約の婚約者
「自分の気持ちがわからない」


「わからない?」


「最初はさぁ、あいつのセックス嫌いだったし、あんなヤツ結婚どころか彼氏すらもイヤだったのに……」


「今は?」


「ムカつくけど、飼いならされた感じ……」


スプーンを口に咥えて面白くなさそうな顔をする。だが、その頬が少し赤くなっているのは気のせいだろうか?


「ねぇ、沙希は片桐さんが好きなんじゃないの?」


「はぁ!?奈央まで片桐と同じこといわないでよ!?」


沙希は咥えていたスプーンを思わず落としてしまう。


「片桐さんがそんなこと言ったの?」


「ええ、自信満々に!」


「さ、さすが片桐キャップ……」


あの沙希が手玉に取られている感じがする、と言いかけて奈央は言葉を呑み込んだ。反撃が怖い。



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