契約の婚約者
「沙希----」


片桐が優しく沙希の名前を呼び、頬にかかる髪をすく。


「今日は早く上がれそうだし、メシでも行こう。何が食べたい?」


食堂だと分かっているのに、他の社員の目があるというのに、どうしても片桐の手を振り払えない。




その指の心地良さを知ってしまったから----


その温かさについ頬を預けたくなる。




ムカつくけど、やっぱり安心してしまう。


触れられると心が喜んでいるのがわかる。





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