契約の婚約者
「自覚?何、を?」


沙希はわざと惚けてみせる。


「俺の婚約者だということを自覚してもらわないとな?」


「は?イ・ヤ・よ!」


「強情だな?」


片桐は沙希の反応を分かっていて楽しんでいるようだ。


「会社では知られたくない」


「ほう、会社では、ということは会社以外ならいいんだな?」


「……っ……」


こんな風に男性に丸め込まれ、言葉に詰まる沙希を見るのは初めてだ。


席を立とうかどうしようか迷っていた奈央は、こんな面白いものは見逃せない、とまたワイドショーの観覧者気分で傍観する。



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