契約の婚約者
「カタギリさん、そっちこそ覚悟しておいてよ?私を本気にさせたらどうなるか分からせてやる」


沙希は片桐を真っ直ぐに見つめ、もう一度軽く唇にキスを落とした。


「今日は、居酒屋がいい。思いっきり焼酎が飲みたい」


沙希はそう言って、何事もなかったようにトレイを持ち席を立った。その後を何故か顔を赤くした奈央が急いで追うのだった。


残された片桐は、堪えきれず、肩を震わせて笑っていた。


食堂に居合わせた社員は、幸にも不幸にも、社内随一の美男美女のキスシーンを目撃するだけでなく、あの鬼の総帥、片桐が声を上げて笑う姿まで見ることができたのだった。



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