契約の婚約者
「カタギリさん、ぼぉっとしてどうしたの?」


「あぁ、いや……お前がそんなこと言うとはな?」


「何が----?」


沙希は自分の発した言葉の意味を分かっていないのか、怪訝そうに尋ねる。



「……分からないならいい」


「変なカタギリさん」


「俺はそんなお前が心底好きだよ----」


突然の告白に沙希は頬を赤らめるでもなく、思いっきりイヤそうな顔をする。


自分は脈絡のない言動をよくするくせに、相手にされるのはイヤらしい。


「趣味ワルッ……ねぇ、さっさと食べようよ?いただきま~す」


嬉しそうにスプーンでリゾットを口に頬張る沙希を片桐は目を細めて眺める。


オヤジくさい顔で見るな、キモチ悪い、と何を言われようが、その夜の片桐は何も言い返さず沙希を優しく見つめていた。





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