契約の婚約者
「沙希は天邪鬼で照れ屋なんだよ。気にするな。」


横にいた片桐が沙希の頭をくしゃと撫でながら、フォローする。


「っさいなぁ、カタギリさんは……」


沙希は片桐の手をぱっと振り払い、顔を背けた。


ニューヨークへ発つ前にこんな沙希を見れるなんて、と奈央は瞠目した。


二人の間の空気が明らかに以前と異なることがわかる。


沙希が片桐に完全に心を許している。


自分には中々見せてくれなかった素の沙希----


奈央は複雑な思いで二人のやりとりを眺めていた。


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