契約の婚約者
「沙希、片桐さんと上手くいっているんだね。安心した」


「はぁ？何言ってんの？カタギリさんがうざく絡んでくるだけだよ」


「お前は本当に照れ屋だな？」


片桐は相変わらず沙希の頭の上に手を乗せ、笑っている。


「キモッ……サブイボ出るからヤメテ？」


「何かやっぱ寂しいなぁ……片桐さんに沙希を盗られちゃった」


片桐の腕をうざそうに振り払う沙希を見つめ、奈央は少し寂しそうに笑った。


「バカじゃん。カタギリさんと奈央だったら奈央の方が全然大事だよ」


「沙希ったら……」


奈央は冗談でも嬉しいと笑う。


冗談じゃないのに、と沙希は眉をひそめるが、奈央は片桐の口元が一瞬引きつったのを見逃さなかった。


本当にこの二人は……と奈央は思わず声を出して笑ってしまった。



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