契約の婚約者
普段はブランドスーツに身を包み、一分の隙も見せない彼女からは想像もつかないこの姿。


キャミソールにショートパンツ、もこもこの室内ソックスを履いてまったりソファーに寝転ぶ。


缶ビール片手に再生ボタンを押そうしたとき、ピンポーンとインターホンが鳴った。


時計は既に11時を指している。


コンシェルジェに顔バスが通り、こんな時間にインターホンを慣らし続ける知り合いは彼女には一人しかいない。


無視を決め込むが、インターホンが鳴り止まない。


近所迷惑だ。


「全く……面倒な男……」


缶ビールをテーブルに置き、沙希はディスプレイで相手を確認することなく玄関へと向かった。



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