アジアン・プリンス
「あら、ニック、お久しぶり。お元気だったかしら?」


アンナの言葉は再会を喜んでいる内容だが、声が与える印象はまるで逆。険を含んだ声色に、ティナのほうがビックリだ。


「ご無沙汰しております、レディ・アンナ」


そう言って膝を折り、うやうやしく頭を下げたのは、レイの警護官ニック・サトウである。

茶褐色の髪を短く刈り上げ、同色の瞳をしていた。レイよりひと回り大柄で、見るからにSPといった印象の男性だ。

彼は、今日のアサギ島にも同行していた。


(ちょっと待って、あの……ビーチでのキスを見られていたらどうしよう)


不意にレイのキスを思い出し、青くなるティナであった。


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