アジアン・プリンス
「どうぞ、ミス・メイソン。お掛けください」
そこは皇太子の執務室ではなく、ティナが与えられた“貴婦人の間”をさらに小ぶりに、そして簡素化したような個室だった。
「補佐官用の事務室ですよ。ミス・メイソン」
ティナの視線に気づいたらしく、その部屋の主、ニック・サトウの父にあたるアキラ・サトウは言った。
「ミスター・ニック・サトウ。私は皇太子のお呼びと聞いてやって来たんですが」
当然の質問だろう。
だが、後ろに控えるニックは何も答えない。あまりの寡黙さに、そこはかとない威圧感を感じ、ティナは恐ろしくなる。
その直後、補佐官サトウがスッと手を上げた。ニックは一礼して無言で部屋から出て行くのだった。
「あの……」
「まずはお掛けください。殿下のご命令で私はここにおります」
その口調は、明らかにニックの父と思わせるものだ。
息子に比べ小柄でティナと身長は変わらない。しかし、その常に正された姿勢からは、己の職務に対する誇りと、威厳を漂わせていた。
そこは皇太子の執務室ではなく、ティナが与えられた“貴婦人の間”をさらに小ぶりに、そして簡素化したような個室だった。
「補佐官用の事務室ですよ。ミス・メイソン」
ティナの視線に気づいたらしく、その部屋の主、ニック・サトウの父にあたるアキラ・サトウは言った。
「ミスター・ニック・サトウ。私は皇太子のお呼びと聞いてやって来たんですが」
当然の質問だろう。
だが、後ろに控えるニックは何も答えない。あまりの寡黙さに、そこはかとない威圧感を感じ、ティナは恐ろしくなる。
その直後、補佐官サトウがスッと手を上げた。ニックは一礼して無言で部屋から出て行くのだった。
「あの……」
「まずはお掛けください。殿下のご命令で私はここにおります」
その口調は、明らかにニックの父と思わせるものだ。
息子に比べ小柄でティナと身長は変わらない。しかし、その常に正された姿勢からは、己の職務に対する誇りと、威厳を漂わせていた。