アジアン・プリンス
「よくお似合いだ。そのドレスは今夜のために、殿下があなたの母国でお求めになったものです」

「え? そんな前に?」


NYを発つ前に、レイは王の名の下に晩餐会を計画していたのだ。このドレスも、靴も、宝石も、そしてシルクの下着も……。グリーンの光沢に包まれたティナは、身に着けた白い布地を思い出し胸が高鳴る。


「あの、殿下にお礼を申し上げたいのですが。相談したいこともありますし、殿下はどちらに?」

「そのイヤリングとネックレスには、ブレスレットも付いているのですよ」


サトウはティナの質問に答えなかった。それは気づかなかったのではなく、あえて無視した、といった印象を受ける。

そして、彼が差し出したケースには、エメラルドのブレスレットが納まっていた。色も形も綺麗に揃ったエメラルドが、ダイヤモンドと交互に1周している。  


「時価にしまして、50万ドルは下らないお品でございます」


ティナは驚くのもそこそこに、ムッとした。

宝石にもお金にも興味はない。今の彼女が望むことは、ただ1度でいいからレイに抱かれること。そして、彼のために王妃となることだ。レイの役に立ちたい、それだけだった。


「3点をセットにいたしますと、およそ100万ドルの」

「お返しします。このディナーが終われば、全て揃えて。私は宝石など欲しくありませんから!」


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