アジアン・プリンス
ティナの言葉に、サトウは意地の悪い笑みを浮かべる。


「そうですね。あなたが欲しておられるのは王妃のティアラだ」

「それは! あなた方が私に押し付けて来られたものじゃありませんか!?」

「現国王のではございません。次期国王の……ありていに申し上げれば、レイ皇太子殿下の妃の座をお求めのようですね。そうでなければ、陛下のおわします島のビーチで、王弟殿下を誘惑などできないでしょう」


ティナは一瞬で真っ赤になった。

やはり、あの電話。レイは何も言わなかったが、あのキスを見ていたサトウからの電話だったに違いない。


「失礼いたしました。先ほど申し上げましたとおり、私は皇太子殿下のご命令で、あなたをお呼びいたしました。このエメラルドのブレスレットを、あなたの右手首にはめていただくために」


ティナは心臓がトクンと鳴る。

ゆっくりと息を吐きながら、言葉を選ぶ。


「本当に? 本当にそれは、レイの……殿下のお望みなの?」

「お疑いでしたら、このエメラルドをはめて晩餐会にご出席ください。その場で、殿下にご確認いただけましたらよろしいでしょう」


そう言って、サトウは深々と頭を下げた。


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