アジアン・プリンス
口当たりが良く、ひんやりとしている。

熱い国に合わせて、少し低め温度で提供しているのかもしれない。


レイはティナに誘惑された、と怒っているに違いない。だから、ティナからバングルを取り上げ、冷ややかに無視する。

まるで、ビーチのキスなどなかったかのように……。


「ロックフォールは苦手かい? アーモンドビスケットを持ってこようか? それともフォアグラのほうがいいかな?」


ハッとしてティナは顔を上げる。

一瞬で目を奪われたのは、煌くアズルブルーの瞳だった。


「ああ、失礼。ソーヤ・ジャック・サイオンジと言います。さっきは離れていて、とても挨拶はできなかった」


そう言ってティナに手を差し出したのは、レイより淡い紅茶色の髪と、日に焼けた肌を持つ、長身の男性だった。

彼以外の男性は燕尾服を着ている。ソーヤは海軍用の、ネイビーのメスドレスに白いウェストコートを着用していた。

だが、何より瞳の色でレイの異母弟だとすぐに気づく。


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