アジアン・プリンス
「どうしたんだい、ティナ? 気分でも悪い?」 

「い、いいえ、違うの。あの……レイもそうだけど、あなたも素敵な色の瞳をお持ちなのね」

「ああ、このアズルブルーかい。王室の血を引く男はみんな、なぜかこの色の瞳になるんだ。ほら、サー・トーマスもそうだろ?」


そう言われて、サー・トーマス……スタンライト外務大臣を見た。

サー・トーマスの父親は第12代リュウ国王。しかし、戦況悪化に巻き込まれ、わずか33歳で亡くなる。父親さえ生きていれば、彼が今の国王であったかもしれない。

そういった事情からだろうか、野心家の本性がちらちらと見える。

だが、基本的には60代後半の上品な紳士だ。所々白の混じった焦げ茶色の髪をしているが、瞳は確かにアズルブルーだった。


「だから、アズライトは王家の石と呼ばれているんだ。――ああ、そうだ。僕の母が、君に失礼なことを言ったと聞いた。本当に申し訳ない」


急に真面目な顔になって謝罪され、ティナのほうがビックリだ。


「そんな、やめてちょうだい。立場が違えば、守るものも違ってきて当たり前だわ」

「君が心の広い女性で良かった。母は子供のためと思っているらしい。親に感謝はしているが、自由が恋しい年頃なんだ。わかって欲しいね」


ソーヤは肩をすくめながら、冗談めかして言う。そんな仕草もレイに似ている。いや、実際のところ、そう似てはいないのかもしれない。

だが、ティナは必死になってソーヤからレイの気配を感じ取ろうとしていた。


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