アジアン・プリンス
丸2日間、日本のマスコミを抑えるのに費やした。

人任せにして、大金をバラ撒いたほうが楽だったかもしれない。だがレイは、誠意を持って対応したかった。

それはティナの……いや、ふたりの将来を考えた結果だ。

ティナはアメリカに戻さなければならない。たとえどんなことをしても、彼女に元の生活を取り戻してやらなければならない。レイにはその義務があった。

ホッとしてアズウォルドに戻ろうとしたとき、再び1本の電話が鳴る。それは王室報道官からで、レイの2日間の努力を嘲笑うものであった。


『殿下! デイリーニューズ紙から殿下とミス・クリスティーナ・メイソンの記事が出ます。明後日の朝発売で、明日には詳細が流れるようです。こちらの対応を指示してください!』



「こ、これは……」


ティナが今、手にしているのはゲラ刷りと呼ばれる試し刷りの原稿だった。

白黒の写真には、ふたりが抱き合い熱烈なキスを交わすシーンが写っている。バックには大きな窓があり、見覚えのあるソファやコレクションボードが……そこは室内だった。


「ビーチの写真じゃなかったの? 私はてっきり」

「ああ、私もそう思っていた。だが……応接室に、お茶のおかわりを持ってきたメイドを覚えているだろうか?」


ティナはふいに尋ねられ、記憶を手繰り寄せる。


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