アジアン・プリンス
(35)欲情の炎
めくるめくキスだった。

今度は絶対に拒絶しよう、ティナはそう心に決めていたのだ。そう、ほんの10秒前まで。

愛することすら許されないなら、キスなどしてはいけない。ティナが簡単に応じるから、すぐにでもベッドに飛び込みそうだから、レイはティナを軽んじているのだろう。

わかっていても、レイの唇が触れた瞬間、ティナの全身に衝撃が駆け抜ける。身体の奥が熱く火照り、理性も常識もかなぐり捨てて、レイに全てを捧げたいと願ってしまう。

ティナは足元にバッグを落とし、レイの首に手を回した。今の彼女はブラジャーを着けていない。尖った胸の先端は、キャミソールとシャツ越しにティナの興奮をレイに伝えていた。


「ティナ、ティナ……ここまでだ。このコテージには私たちだけなんだ」

「そうよ。私たちだけ、誰も見てないし、誰も知らないわ」


ここまでと言いながら、レイはティナの首筋を唇でなぞった。

金色の髪を手で避け、荒々しい呼吸を繰り返す喉元に舌を這わす。その、あまりに官能的な感触に、ティナの身体は小刻みに震えた。


「ティナ、このままだと私は君を傷つけてしまう」

「傷つかないわ。ううん、傷ついても構わないの。1度だけでいいの。あなたのことを覚えておきたい」


ティナは溺れかかったようにレイにしがみ付いた。

レイはそんなティナの髪を撫で、もう片方の手を彼女の背中に回しながら答える。


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