アジアン・プリンス
髪も黒だと思ったが、光に透かすとチョコレート色に艶めく。

パーツはどこをとってもアングロサクソンを思わせるのに、トータルで見るとまさに“アジアンプリンス”に感じるのはなぜだろう。


「静まれ! 大事ない。――下がれ」


たったそれだけで、色めき立った周囲の人々に安堵の沈黙が広がる。

なんという人なのだろう。ティナは胸の中が、彼の瞳の色に染まっていくのを感じていた。


「お嬢さん。2階から降りる時は階段を使うべきだ。窓からロープで降りるのは、泥棒かレスキュー隊くらいだろう。それとも訓練中かな?」

「い、いえ。あの……」

「さて、怪我はないかい? 私は、君を降ろしても大丈夫かな」


ずっと抱かれたままなことに気づき、ティナは慌てて下に降りた。

地面に足をつき、どこも痛まないのにホッとする。


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