アジアン・プリンス
「レイ……レイ、お願いよ。今だけでいいから、愛してるって言って」


泣いて懇願するティナの脚の間にレイは指を伸ばした。

ティナは突然のことに短く呻き声を上げ、手で顔を覆い、唇を噛み締めた。だが、レイはその手を押し退けたのだ。

一瞬、ふたりの視線が絡み……紺碧の瞳は深い闇に紛れ、ティナには何も読み取れない。

その時、レイの指が彼女の敏感な場所を探り当てた。

ティナが驚きのあまり上げようとした声を、彼は唇で塞ぐ。その直後、レイの指は遂にその奥の泉まで到達して……。レイの指は恐ろしく繊細で、少しずつティナの身体から快感の波を呼び覚ます。

ゆっくりと思えば激しく、そして早くなる。ティナがそこに至る寸前、指の動きを止め、また別の場所にキスをする。それを幾度となく繰り返され……。

ティナが身体を反らし、片手でシーツを掴み、片手でレイの腕に爪を立てた瞬間。今度は動きを止めることはせず、更に激しさを増してティナを目的の場所へと導いた。


「お願いレイ……嘘でもいいから愛の言葉を聞かせて」


大きく息を吐き、ティナはレイにもたれ掛かる。

素肌に触れるレイの高ぶりは、ズボン越しとは思えないほど熱い。自分はレイのものになる。そして彼も、たとえ一瞬でも自分のものに。

そんなティナの耳にレイの声が聞こえた。


「クリスティーナ。私が偽りの愛を口にすることはない」


それは、下半身の欲望を押さえ込むかのような、レイの冷ややかな声だった。


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