アジアン・プリンス
ティナは膝を抱え座り込んだ。そして、腕に額をつけ顔を隠すようにする。


「そうじゃないことは君も気づいたはずだ。私の体はいつだって君を求めている」

「そうね。女の体を求めてるのね。きっとそれが正常な男性の反応なんでしょう。でも、あんなことをした後で、また私の手首にバングルを嵌めるなんて……どういうことなの?」



レイは、ベッドの上に転がったまま、荒い息を繰り返すティナの右手にバングルを嵌めたのだ。フサコ王太后からいただいたアズライトのバングルである。

驚き、目を見張るティナにレイが言った言葉は、


『今度こそ外してはいけない。その時は、私は君を許さない』


ティナに反論の隙を与えない早業だった。

しかもそのまま口づけされ、再び……レイはティナを楽園の花園に引き摺り込んだのである。



「サトウが何を言ったのか見当はつく。私もうっかり、彼の言葉を鵜呑みにしてしまった。晩餐会では不当に君を睨んで済まなかった」

「睨んでいたのは私じゃなくてソーヤでしょう? 私はあなたに無視されただけよ」


ティナは思い出すと切なくなり、更に顔を背けた。


「君が欲しいのは王妃のティアラで、バングルは不要だと聞かされたんだ。だから私は」


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