アジアン・プリンス
レイは軽く首を振る。


「頼んでいるんだ」


ティナにはもう、レイの決意を動かすことなどできない。ティナも同じだ。今となっては国王の妃になどなれようはずがない。


「わかったわ。無理はしないで。体に気をつけて……少しは自分の幸せも考えて、人生を選択してちょうだい」

「ティナ。それではまるで永遠の別れのようだ」


ティナはそのつもりである。

そんな決心を打ち砕くように、レイはティナの頬を撫で、軽く口づけた。サトウやニック、他の部下たちも居る前で、である。しかも彼は、屈託なく笑っていた。


「レイ!?」

「殊勝な君は君らしくない。2階の窓から飛び降りるくらいのお転婆が、君には似合いだ。――では、行ってくる。幸運を祈っていてくれ」


レイは、サーフパンツにパーカーを羽織った姿でヘリに乗り込んだ。

チョコレート色の髪は太陽の陽射しを受け、王冠のように煌いた。その姿が眩しくて、ティナは、一生忘れないと心に刻み込んだ。


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