アジアン・プリンス
1週間前に別れたレイの姿を、ティナが胸に思い浮かべていた時、不意に、コテージの頭上にヘリのローター音が聞こえた。

ティナは咄嗟に、レイが迎えに来てくれた、そう思って戸外に飛び出す。

だが、玄関前のスペースにヘリが着陸し、降りてきたのはレイの警護官ニック・サトウだった。


「まあ、ニック! この間は何も言わずに戻ってしまって。あなたは私が誰だか覚えているのかしらっ?」


いつの間にか、ティナの横にアーレットが立っていた。彼女は両手を腰に当て、声を張り上げる。

ニックは、ばつが悪そうに横を向き、やがて諦めたらしく返事をした。


「もちろん覚えてますよ、母さん。ニューイヤー休暇に戻ったはずです」

「ええ、去年のね」

「……」


ふたりの会話を聞き、ようやくティナはニックとアーレットの髪と瞳の色が同じことに気づいた。

ニックの大柄で東南アジア風の容姿は、日本的なサトウとはあまり似ていない。どうやらニックは母親似のようだ。


「仕事で来たんです。母さん、邪魔しないで貰いたいんだけど」

「なんて酷い息子かしら。いい、ティナ? この子が意地悪をしたら私に言いなさい。お尻を引っ叩いてあげるわ!」


アーレットはぷりぷり怒りながらコテージに引っ込んだ。


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