アジアン・プリンス
この1週間アーレットには本当に世話になった。食事の用意から買出しまで、全部アーレットがしてくれたのだ。

観光地から外れたこの辺りでは、金髪のアメリカ人は珍しいらしい。それも、皇太子所有のコテージに寝泊りしているとなると……。

様々な事情から、ティナは森から外には出られなかった。

アンナも何度かコテージを訪れた。雑誌の差し入れや、ティナの話し相手になってくれたのである。


「スキャンダルは立ち消えになったみたいね。いい加減、私はここから出てもいいんじゃないかしら」


ニックが悪い人間だとは思っていない。だが、レイが呼んでいると嘘をつき、ティナを補佐官サトウの許に届けたのは彼だ。


「ミス・メイソン。あなたには私と一緒に本島に戻っていただきたく、お迎えに参りました」

「それもレイ……殿下のご命令? 嘘じゃない証拠はある?」


ティナの厳しいひと言にニックは答える。


「先日のことを言われておいでのようですが。私は皇太子補佐官のご命令に従ったまでのこと。確かに、殿下のご命令と承りました」

「では、あなたのお父さんはあなたにも嘘をついたのね」

「……」


どうやら、都合が悪くなると黙り込むタイプらしい。


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