アジアン・プリンス
ティナは急ぎ足で噴水の間を通り抜け、廊下に飛び出した。

廊下に立つ衛兵が驚いたが、彼らも事情を察したのだろう、見ない振りをしている。どうやら、王宮の全員がニックの言ったような誤解をしているらしい。


ティナは居た堪れなくなり、階段を駆け下りるため、走り出そうとした。


しかしその瞬間、ティナは手首を掴まれる。


「ティナ! 君は誤解をしている。その誤解を解きたいが、ここは適切な場所じゃない」

「何も誤解はしてないわ! それに、仮にそうでも、あなたが私に説明する義務はないわ。私はあなたの側室じゃないんだからっ!」


誰に聞かれても構わない。ティナはそんな気持ちを込めて大声で怒鳴った。

レイはとくに怒る様子もなく、表情も変えずに答える。


「もちろんだ。君が私の側室であったことは1度もない。未来においても同じだ」

「だったら手を放して……」

「逃げないと約束するなら」


そんなレイの言葉にティナは渋々頷いた。


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