アジアン・プリンス
レイはため息をひとつ吐くと、


「ニックだな。奴は信頼に足る男だが、柔軟性に欠ける。そして、父親同様、いつまでも私を子供扱いする」


困ったような笑みを浮かべた。


だが、困っているのはティナのほうだ。こんな状況でも、もう1度レイに会えたことが嬉しくて仕方ない。

その一方で、切ない真実を知ってしまった。さっきの会話から、レイはミサキと結婚間近であることが予測できる。それも、婚約者の妊娠という形で。


「ティナ、私はこれから日本に行かなくてはならない。数日で戻る。君はその間、セラドン宮殿に滞在してくれ。いいね。これ以上、私を困らせるものではない」

「帰るわ……アメリカに。そのほうがあなたも」

「ダメだ! まだダメだ。約束してくれ。私の帰国を待つ、と」


「殿下っ! ミス・トオノが、ご気分が悪いと申されておいでです。お部屋にお戻りを!」


それはニックの声だ。


「行って、早く」


ティナはミサキを気遣い、そう告げる。


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