アジアン・プリンス
「君が約束してくれたら」

「でも……」


今さら、なんだというのだろう。レイは本当に自分を側室にするつもりなのだろうか。そう思うとティナは軽々しく返事ができない。

レイの傍にいたい。でも、2番目になるのは無理なのだ。我慢できると思ったけれど、不可能だと教えてくれたのはレイである。そして、もし子供ができたら、どんなことをしても結婚すると彼は言った。だからこそ、抱かない、と。

だが、ミサキのことは抱いたのだ。

婚約者なのだから、そういったことになってもおかしくはない。他の、それも複数の女性と深い関係になるより、よほどモラルに即した行いだ。

そう、ティナを抱くよりもずっと……。

わかってはいても、悔しくて苦しくて、とても耐えられそうにない。


なのにレイは、ティナにまだアズウォルドに残れと言う。


「皇太子殿下!」

「黙れ! 私ではなく医者を呼べ!」

「ミサキ様は殿下の御名をお呼びでございます」


レイは目を閉じ、軽く首を振った。


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