アジアン・プリンス
1時間後、レイはニックを皇太子執務室に呼び出した。

この王宮が建って以来、国王執務室が機能したことは1度もない。実質、全てを取り仕切っているのが、この皇太子執務室だ。


マホガニーブラウンで統一された家具は、一民間企業の役員室と大差なかった。対外的に豪華な宮殿を建て、国賓用に色々作ってはいるが、レイ自身は質素を好む。

ティナを連れて行ったアジュール島のコテージが、彼には何よりお気に入りの場所だった。

他の誰も同伴したことがない。レイは自分のテリトリーにティナを入れたのだ。そのことの重要性をティナは理解しているのだろうか。

それを考えるとレイは頭が痛くなる。


ノックが2回。それはニックだった。レイはニックを部屋に招き入れる。


「ミス・トオノは貧血だそうだ。大きな問題はない」

「そうですか。よかったです」


ニックは勘違いしたまま、大きく安堵した様子だった。



約10日前、日本のアズウォルド大使館から極秘裏に連絡が入る。

それは、婚約者のミサキ・トオノが親元から姿を消した、というものだった。


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