アジアン・プリンス
サトウは応接室の絨毯の上に直接座った。

これが噂に聞く土下座か、と感心したが、そうされる心当たりがティナには思いつかない。


「ミスター・サトウ? どうされたんですか? バングルの件なら」


レイのバングルはティナの手首に戻ってきている。

それにティナは、レイの誓いの意味がプロポーズであったことを知り、天にも上る心地だ。多少のことなら、今更、だろう。

だが……。


「クリスティーナ様、どうかお願い申し上げます。皇太子殿下の結婚の申し込みを断わり、アメリカにお戻りください」

「……そんなに……私が嫌いなの?」

「いえ、そうではございません。――殿下は、王室法の改正案を議会に提出される予定だと聞きました。そして、過半数の承認を得ている、とも……」


ティナには初め、サトウが何を言いたいのかわからなかった。

しかし、詳しい説明を聞いたとき、ティナは愕然とする。

なんと、レイはアズウォルドの王制を廃止するつもりだ、と言うのだ。そうすればアズウォルドは王国から共和国となり、今後は大統領が選出される、と。

それは、あまりに突拍子もない話だった。


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