アジアン・プリンス
「ですが日本は、そう簡単には認めないでしょう。12年前のテロで、現国王陛下の妃、ケイコ妃殿下がお亡くなりになられました。日本からお輿入れされて2年目、27歳の若さでございます。その国民感情をなだめるためにも、レイ殿下は日本人女性と婚約されたのです」


確かに、今回のミサキの行動は婚約破棄の充分な理由になるだろう。

だが、半分以上アメリカの血を持つレイがアメリカ人女性を妻に迎えでもしたら……。

残る手段は、現国王に日本人王妃を迎えていただき、後継者を作るという方法。スザンナなどは「それが1番よろしいわ」と言うが、国王の事情を知るティナはとてもうなずけない。

サトウも同じだった。


だが……ティナは嫌な予感に囚われた。

なぜならレイは、「チカコは私の申し入れを快く承諾してくれた」と言った。

ティナがたった今想像した申し出なら、チカコは喜んで了承するだろう。だが、あんなに兄王を敬い、大切に思っていたレイが……。

まさか、兄から人としての尊厳を奪うような選択をするとは思えない。

王妃となった女性も道具のように扱われ、産まれた子供はまるで……。


「殿下ご自身です――。あなたとの間に子供を作り、幸福な家庭を築く一方で、父親と会うこともできない母子を作る」


そして、サトウの心配はそれだけではなかった。


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