アジアン・プリンス
(44)アズウォルドの誇り
「殿下、申し訳ございません。てっきり、殿下のお子様に違いない、と」


レイが成田に到着し、最初にしたことが、記者会見だった。

彼は、ミサキとの婚約解消を独断で発表したのだ。ティナやスザンナが知っていたのはこのためだった。


『ミス・ミサキ・トオノは私の婚約者として、12年もの長きに渡りアズル王室に協力してくれた。非常に感謝している。私は彼女が幸福になることに、どんな協力も惜しまない。尚、今回のことは個人の問題である。両国の友好関係に一切の影響はない』


レイはミサキに結婚の予定があること。花婿がアズウォルド国民であること。そして、日本政府と遠野家が“快く”承諾してくれたことに感謝して、記者会見を締め括った。

これでは誰も反対はできない。

その後、いくつかの会談を済ませ、レイは成田到着から24時間後には、再び機上の人となっていた。


王室専用機は成田を飛び立ち、5時間足らずでアズウォルド本島に到着する。

その機内で、ひたすら謝罪を繰り返しているのがニックだった。


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