アジアン・プリンス
「私は君にとってよほど信用の置けない人間らしい。非常に残念だ」

「申し訳ございません!」

「自分自身にやましいところがあるのではないかな? 胸に手を当てて考えてみてはどうだ?」

「で、殿下っ! 私は、そんないい加減な……いや、あの。とにかく、お許しください」

「さぁて、どうするか」


平身低頭のニックを横目で見つつ、他の警護官や補佐官は忍び笑いを漏らしている。

それもこれも、レイの機嫌がすこぶる良いせいだ。


先手必勝が功を奏したのか、日本での件は意外とスムーズに片づいた。

すでに、議会には手を回し、承認も取り付けてある。チカコも同様だ。他の王族や関係者は、了解する者もいれば保留の者もいた。だが幸いにも反対者は出なかったのである。基本的に、新制度が強制ではないためだろう。

ともかく、これで正式に婚約は解消した。

アズウォルド国教会も、ミサキとマシューに結婚許可証を出すだろう。

そしてレイ自身も、ようやく愛の言葉をティナにささやける。そう思うと、ついつい気持ちも軽くなりニックをからかってしまうのだ。


明日の正午、王宮にて記者会見を行うことに決めた。


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