アジアン・プリンス
そして、何としても国王の母であろうとしたミセス・チカコ・サイオンジの壁を突き壊した手段とは……。


ティナはミサキの結婚式の準備を手伝いながら、レイに尋ねた。


「ねえ、本当に良かったの? あなたのお母様がお怒りなんじゃない?」

「彼女の立場に影響はない。嫁いで30年あまり、そのうちの28年近くを海外で過ごしている女性だ。チカコに称号を与えても、文句は言わせない」



レイはチカコにレディの称号を与え、正式にシン国王の母として王宮に住むことを認めたのである。


さすがに、王太后の身分をレイの母から移すことは不可能だ。それに準じた立場でもなく、あくまで儀礼称号。しかし、議会はそれにすら反対した。

レイの祖父と父の争い、また、レイの父がチカコを王妃にしようとした騒動を思い起こしたのだろう。


『過去は過去。私は祖父や父とは違う。私は私の母も、兄弟の母も大切にしたい。私は兄王に代わり、チカコの長年に渡る貢献に報いたい』


本来であるなら最も敵対する立場のレイ皇太子のひと言に、議会は承認せざるを得なかった。


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