アジアン・プリンス
2日前の、悔しそうなレイの顔を思い出し、ティナはクスクス笑った。


「もうっ! 笑ってないでちゃんと教えてよ。色々制限されて、今日までロクに話もできなかったんだから」

「ごめんなさい。でも、こんな短い時間じゃ話せないわ。ねぇアンジー、今日のあなたは本当に綺麗よ。淡いブルーのドレスがとっても素敵。きっとビーチに映えるわ」

「やだもう、姉さまったら! あたしどころじゃないでしょう? びっくりしちゃったわ。姉さまがこんなにスタイル抜群で、スベスベのお肌をしてるなんて!」


ティナの素肌は陶器のように透けていた。

今のティナは、ティアラをつけたビスクドールのようだ。アンジーはそんな姉を、羨ましそうに見ている。でも、ブライズメイドは喜んで引き受けてくれた。どうやら、プリンセスの妹という肩書きだけでご満悦らしい。



アンジーが先に会場に行き、ティナはひとりになった。

しばらくして、控え室に置かれたテレビ画面に視線が釘付けになる。

テレビでは今日の特集が組まれ、ビーチの様子が映し出されている。式の様子は国中に放送されるらしい。ビーチにはロープが張られ、アサギ島の学生を中心にアズル・ブルーの国旗が揺れる。星条旗や日の丸もあった。

その最前列にスマルト宮殿で会った例の少女を見つけ、ティナの相好が崩れる。


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