アジアン・プリンス
そんな思いが背中を押し……ティナは肯いた。


「ありがとう。君の安全は私が約束する」

「そうしていただけると助かります。私は8年以上、海外はおろか、ニューヨークからも出たことがありませんので」


ダンスが終わり、皇太子は一歩後ろに下がった。


「レイ・ジョセフ・ウィリアム・アズルの名に懸けて、約束は守る」


右手を左胸に当て、そう答えた。

そして、彼の左手が握っていたティナの右手を離す間際――彼女の指先に軽く口づけたのだ。


「我が国の誓いの証だ」


皇太子の唇が指に触れている間、彼は視線を落とさない。その青い目は、ずっとティナの瞳を捉えたままでいた。


(ダメよ! 落ち着きなさい! 私は、皇太子の妃に望まれてるわけじゃないのよ!)


胸の鼓動が鎮まらない。――あなたを選んだのは私だ。君でなければならない。

あまりに魅力的な、プリンスの称号を持つ魔法使いに、ティナの理性は麻痺しつつあった。


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