アジアン・プリンス
「しかし……2階から、アノ姿で降りようなどと、よく思い立ったものですね。お転婆をするお歳ではないように思うのですが」


レイ皇太子一行は、滞在先のホテルリッツカールトンに戻った。

警護責任者のニックから報告と明日の予定を聞いた後、会話は極々プライベートなものに移る。


「これ、ニック。未来の王妃さまであるぞ。言葉を慎みなさい」

「……はい、申し訳ありません」


皇太子補佐官の息子だから、と言われるため、必要以上にニックは皇太子を守る責任感に駆られている。それは、父であるサトウも同じだった。


そんな生真面目な彼らにすれば、王妃候補であるティナの行動は、破天荒極まりない。

あのドレスを見ただけで、普通の王族であれば彼女を候補から外すだろう。


サトウは内心、皇太子もそうするであろう、と思っていた。


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