アジアン・プリンス
レイが彼女に与えたふたつの飴玉“レディの称号”と不遇の息子が得た“王子の身分”というものにご満悦のようである。

そのせいか、今度はひたすらソーヤに縁談を持ち込むようになった。


だが、今度はレイが正真正銘国王である。

王位継承者の結婚には国王の許可が必要だ。以前は摂政であったため、形ばかりとはいえ許可を出すのは兄王となっていた。


「ミス・マナミ・オクムラと言ったか、例の女性を今度はお前の花嫁に、と昨日も私に言いに来たんだ」

「シン兄上の妃にって、無断で国内に連れ込んだ女性だろ? 勘弁してくれ。僕は気楽な関係が性に合ってるんだ。恋は楽しいのが1番さ。まだまだ人の親になる気はないし、ね。男は幾つになっても子供は持てるだろう?」

「そんな不遜なことを言っていると、今にとんでもない目に遭うぞ」


レイはため息を吐きつつ、革張りの椅子を軋ませながら立ち上がった。

そのまま歩いて、ソーヤの正面のソファに腰掛ける。


「相変わらず好きなんだな、“リョクチャ”が」


アッサムの香りを楽しみながら、ソーヤはレイに言った。


応接セットのテーブルの上にはもうひと組、和菓子と有田焼の湯呑が置かれていた。

濃い青味を帯びた緑がレイのお気に入りで、松の絵が描かれている蓋付きの湯呑であった。執務室ではそれに薄い緑茶を入れて飲む。


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