アジアン・プリンス
苦渋の思いで諦めようとした。だが同時に、諦められないことをレイは悟ったのである。

何としても解決策を見つけなければならない。そして、それが確定するまで、ティナに『愛している』とも『待っていて欲しい』とも伝える訳にはいかなかった。


しかしそのせいで、ティナだけでなく、サトウや息子のニックまで、散々先走りしてくれたのである。

中でも、最悪の勘違いは補佐官サトウだろう。

彼は、レイが兄王に日本人の妃を押し付け、最先端の医学を用いて後継者を産ませようとしている――そんな勘違いをしてくれた。

挙げ句、それが為し得なかったときは、王政廃止を目論んでいる、とまで考えたのだ。

そんなことをすれば、レイは責任から逃れられるが、アズル王室を愛し敬ってくれた国民に背くことになる。


ティナはレイに言ったのだ。


――『あなたがいらっしゃる限り、この太平洋を舞台に再び戦火が起こることはありえません』


大変ね、お気の毒ね、私の傍ではすべてを忘れて楽にして下さい。

多くの女性はレイに向かってそう言う。だがティナは、皇太子であるレイを認め、『次の王がレイで国民は幸せだ』と言ってくれた。


最初から、女性を逃げ場にするつもりなどない。

レイは初めて共に戦ってくれそうな女性に出会った。


だからこそ、ソーヤが笑っても、クリスティーナの願いを叶えてやりたいと思うレイなのだった。 


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